2022年になって世界各地で物価が急激に上昇したことについて、その真の原因を分析した結果に基づく著者の仮説を述べた本です。
過去に起きたインフレはいずれも需要の過熱が要因となって引き起こされていましたが、今回のインフレは供給不足に起因している点が大きく異なっている点が重要だと指摘しています。各国の中央銀行は需要加熱型のインフレに対しては対策ノウハウを持っているのですが、供給不足型に対しては対処が手探りの状態となっています。いま世界で起きている事態は、従来の経済学の定説では説明しきれないもののようなのです。
この供給不足を引き起こしたのはロシアのウクライナ侵攻であると誤解されがちですが、実際にはそれ以前からインフレの予兆は現れていたのです。真の原因は新型コロナウイルスのパンデミックであり、これが消費者、労働者の行動変容を引き起こした結果、全世界的な供給不足を引き起こしたと著者は主張しています。具体的には、以下のような変容が起きていました。
サービス消費からモノ消費への転換
大量離職、退職による労働力不足
グローバル供給網の断絶を経た脱グローバル化
こうした事態が、過去にない世界的な同期を起こして一気に波及したことで、急激な供給不足に陥った結果として、インフレが起きています。そして、過去に例のないこうした世界的な「同期」は、情報が瞬時に世界中へと広まるようになったことで引き起こされたのです。この状況に対して、従来の金融引き締めによる冷却対策は効果が望めず、各国が対応に苦慮している状況に陥っています。
さらに日本においては、インフレ下においても1990年代から長期化しているデフレから脱却できずに、スタグフレーションに陥る危険性が指摘されています。物価と賃金が1990年代後半からほぼ横ばいという世界的に見て異常な状態となっている日本では、賃上げとモノの値上げのスパイラルが起きないと没落していってしまうと警鐘を鳴らしています。
ファクトデータに基づいて明快な論理でインフレの正体が示されており、非常に説得力のある内容です。日本の今後に対する指摘は非常に示唆に富んでおり、今手を打たなければ先はないという切迫感を痛切に感じました。