私は自他ともに認める大の鉄道好きです。5歳ごろには鉄道の本を読み漁っていたので、もう鉄暦40年以上ということになります。最近は鉄道好きの人を興味の対象によって「〇〇鉄」と呼び分けますが、その分類に従えば私は「乗り鉄」の部類になるのでしょう。鉄道というのは交通機関なのだから、「乗ってこそのものでしょ」という考え方です。
そんな乗り鉄にとって「聖典」とされるのが宮脇俊三さんの「時刻表2万キロ」なのですが、私はこの年になるまで聖典に触れたことがありませんでした。聖典を読まずして乗り鉄を名乗ってはおこがましい、と勝手に思い立ちこの歳になってついに読むに至った次第です。
昭和50年頃に国鉄全路線を乗りつくすという、興味のない人には酔狂にしか思えない離れ業を成し遂げた際の旅行記なのですが、軽妙な筆致に引き込まれて楽しく読み通せます。今はもう廃線になってしまった路線、廃止になってしまった優等列車(急行、特急)が多く登場し国鉄全盛期の様子が偲ばれ、鉄道好きにはたまらないです。
宮脇さんは「時刻表は読み物だ」という主張をされていたのですが、これは私もまったく同感です。時刻表を巡りながら旅の計画を立てる時ほど、ワクワクする時間はありません。乗り鉄の醍醐味を存分に味わい尽くした旅はうらやましい限りで、いつか私もそんな旅をしてみたいと強く思うのでした。