テレビや雑誌・書籍などのメディアに出てくる人の中には、「××研究者」とか「××の専門家」という肩書で紹介される人が少なからずいます。博士の学位を持ている人もいるので、なんとなく視聴者、読者はそういう人たちの言うことを信用しがちになるのですが、こういう肩書は結構怪しい場合が少なくないんです。
大きな大学や研究機関に在籍する人であれば、論文などで相応に業績がチェックされた上でそうしたポストに就いているはずなので、それに応じた責任のある発言をするであろうと期待はできます。ですが、フリーランスや法人格があるかどうかすらわからない「××研究所」に所属しているような人は、学術界で適切に評価された業績があるかどうかをよく確認する必要があると思うんです。
たとえば、とある雑誌にコラムの連載を持っている人は、「理論物理学者。宇宙創成に関わる理論の研究者」として紹介されています。けれども、私が宇宙物理の研究に関わっていたころに、この方の研究業績と思われるものを目にしたことは一度もありません。過去の論文を調べてみても、この人が宇宙物理や天文学の専門誌へ投稿した様子は確認できないです。つまり、この人は学術界においては「理論物理学者」や「宇宙物理学者」としては認められていないと断言してもいいような方なのです。
同様に、最近「脳科学者」として著作が話題になっている人も、業績や論文がまったく見当たらず、「脳科学」における成果がまったく分かりません。大学院で研究して学位を取ったとしても、その後学術界から離れてしまうと、やはり「研究者」と名乗るのは微妙ではないかと思うのです。
「××学博士」や「××研究者」という肩書は嘘ではなくても、その人の研究成果の正当性は若干怪しいのではないかという目を持ち、所属機関や過去の業績をよく調べることが大事ですね。